屋外広告が都市のランドマークに発展するまで

― 地域に根ざす広告が街を変える ―

都市のイメージイラスト

通勤中の交差点。ふと目に入る看板やネオン。
それが、懐かしさを誘い、誰かの思い出を呼び起こす存在だったとしたら──それは、単なる“広告”を超えたものです。

街に掲出された屋外広告が、いつしか人々の記憶に残り、その街の象徴として愛されるようになる。
そんな「広告からランドマークへの進化」は、特別な奇跡ではなく、地域との深い関係性の中から生まれた“必然”でもあります。

今回は、屋外広告がどのようにして都市の顔となっていくのか、実例とともに読み解きながら、これからの広告のあり方を考察します。


なぜ今、屋外広告が“記号”になるのか?

デジタル広告やSNSが全盛の今、画面の中だけでは伝えきれない「リアルな接点」が見直されています。

中でも屋外広告は、都市の文脈に入り込み、街の空気やリズムと共鳴する“空間メディア”です。
視覚だけでなく、“時間”や“記憶”に触れることができるのが、屋外広告の大きな強みです。

特に以下のような条件を満たすと、広告は“景観の一部”から“ランドマーク”へと昇華していきます:

  • 地域に長く掲出され、生活者にとって馴染みがある

  • 街の風景や文化と調和し、違和感がない

  • 記憶や感情に働きかけるビジュアルやストーリー性がある

  • ただの企業の主張ではなく、“街の顔”として受け入れられている


ランドマーク化した屋外広告の代表例

1. 北海道・札幌「ニッカウヰスキーのヒゲのおじさん」

札幌ニッカウィスキー看板

札幌・すすきの交差点に鎮座する、あのヒゲの紳士。1972年に初登場し、時代に合わせてリニューアルを重ねながら、50年以上もの間札幌の夜を照らし続けています。

ネオン看板としての美しさだけでなく、札幌市民にとっては「この看板が見えると落ち着く」「帰ってきた気がする」という精神的なランドマークでもあります。

雪に覆われた夜の街並みに浮かぶ洋酒の広告は、異国情緒とともに、どこか温もりのある風景として定着。
観光ガイドにも載る“撮影スポット”として、観光資源としても機能しています。


2. 大阪・道頓堀「グリコランナー」

大阪グリコの看板

1935年に初登場し、2020年代に入った今でもなお圧倒的な存在感を放つ「グリコの看板」。
大阪・ミナミを象徴する風景のひとつであり、グリコポーズで記念撮影する観光客の姿はすっかり定番となりました。

6代目となった現在の看板はLED仕様。季節やイベントによって演出が変わることで、繰り返し訪れる人々にも“動的な印象”を与えています。

さらに注目すべきはその経済波及効果。関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算によれば、看板単体の年間波及効果は292億円以上にのぼるとされています。

この数字は、企業の知名度向上にとどまらず、観光振興・街のブランディング・地域経済活性の観点でも、屋外広告が強力な“地域資源”であることを物語っています。


3. 東京・渋谷「スクランブル交差点の大型ビジョン群」

渋谷のスクランブル交差点

1日50万人以上が行き交う渋谷スクランブル交差点。ここに林立する巨大ビジョン群は、東京の象徴であり、もはや“日本の顔”といっても過言ではありません。

これらの広告は単に商品を訴求するのではなく、東京という都市のリズム・若者文化・情報の洪水感といった“東京らしさ”を表現する装置として機能しています。

YouTubeやInstagramで無数の映像に映り込み、海外メディアにも登場する渋谷の光景は、日本発のポップカルチャーとともに世界へ発信されています。

また、広告そのものがアートや体験と融合し、プロジェクションマッピングやインタラクティブな演出も増えており、「参加型広告」へと進化しつつあるのも特徴です。


4. 大分・別府「別府タワーとアサヒビールのネオン」

別府タワー

温泉街・別府のランドマーク、別府タワー。その頂上には、長年変わらず掲げられている「アサヒビール」のネオン看板があります。

1957年竣工の別府タワーは、東京タワーと同じ設計者・内藤多仲によるもので、“昭和の名建築”としてファンも多い建物です。
その塔の頂に、夜な夜な赤く輝くアサヒのネオンがともることで、別府の夜景はよりノスタルジックな趣を帯びます。

地元の人々にとっては「この灯りが別府の夜の風景」として記憶に残り、観光客にとっては「写真に収めたくなる光景」。
まさに、企業広告が街の記憶と感情に深く結びついた例です。


屋外広告が“街の資産”になるために

ここまで紹介してきた広告には共通する姿勢があります。
それは、「企業の言いたいことを押し出す」のではなく、「街に溶け込むことを大事にしている」という点です。

  • 地元の歴史や風景を壊さない

  • 生活者の感情に寄り添う

  • 撮られ、語られ、共有される存在になる

こうした条件が揃ってこそ、広告は街と共鳴し、“ただの看板”から“誇り”へと成長していくのです。

広告という「企業の声」を、街に開かれた「共通の記憶」に変える。
そこにこそ、屋外広告の本質的な価値があります。

本社と街のつながりが、広告を「象徴」へと変える

広告が“街の顔”になるには、ただ目立つだけでは不十分です。
そこに、「なぜこの場所に掲出されているのか」という“意味”が加わることで、広告はより強く、深く、人の心に残るものになります。

その中でも特に強い力を持つのが、企業の本社所在地と広告掲出場所が一致しているケースです。

▶ グリコ × 大阪・道頓堀

江崎グリコの本社は大阪。
看板がある道頓堀は、大阪ミナミのど真ん中。
90年近く掲出され続けているあのランナーは、「大阪の企業が大阪の街を明るくし続けている」という象徴でもあります。

観光客が記念撮影する姿も、ただの“広告映え”ではなく、「大阪らしさ」に触れる行為として機能しているのです。

▶ ニッカウヰスキー × 北海道・札幌

ニッカの創業地は北海道・余市。
札幌すすきののネオンには、「北海道の誇り」「北海道とウイスキーの物語」という文脈が背景にあります。

東京に本社を移した今でも、あの看板が北海道の人々に愛され続けるのは、企業と土地との深いつながりが広告ににじみ出ているからにほかなりません。


なぜ「地元企業の広告」は人の心に響くのか?

  • 本社がそこにある=“本気でその街と向き合っている”という説得力

  • 長く掲出される=街の景観を構成する一部になる

  • 市民の誇りになる=企業と街の関係性がブランド価値に転化

この三拍子が揃ったとき、屋外広告は“販促物”ではなく、街の文化資産になります。


地域密着企業こそ、屋外広告を活かせる時代

実はこれは大企業に限った話ではありません。
地元スーパー、地場建設会社、地方銀行、老舗旅館…どんな企業でも、地域と関係を築いている企業であれば、その街に掲出された広告は圧倒的な“信頼感”を醸成します

むしろ、地元に根を張っているからこそ出せる広告があります。
「この場所に、この企業がある意味」が伝わる広告は、その街にとっての安心や誇りを生み出します。

✅ 地域企業 × 屋外広告 = 地域ブランディングの最強の武器

どうせ掲出するなら、記憶に残る広告を

屋外広告は、コストがかかるからこそ“どうせなら目立ちたい”という気持ちが出がちです。
しかし、“目立つ”だけでは記憶には残りません。
“街と調和しながら、人の心に残る”ことこそが、最も強い広告のかたちです。


地域に愛されるあなたの広告をつくろう

人々が写真を撮りたくなる、
地元の人が「これが街の顔だ」と誇りをもてる、
そんな広告を、あなたの企業やブランドでも目指してみませんか?

どうせ広告を掲出するなら、
“地域に愛され、その場所の象徴となるような広告”を。

私たちは、地域とともに育つ広告づくりをサポートします。
その第一歩を、一緒に踏み出しましょう。

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TEL:096-366-2221

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